05:夜を駆ける

15/63
前へ
/224ページ
次へ
「プリムもありがとうね。期待すれば期待する分だけ、望みが叶わなかったときに私が傷つくことになるから、必死で止めようとしてくれてたんでしょう? それくらいわかるよ。でもごめん。たとえ僅かな可能性であっても、私はそれに賭けたいの。だって、こんな結末あんまりでしょう?」  私は肖像画の縁を掴んで壁から外した。  これはルカ様の大切な絵だ。唯一無二の宝物。  ――だから、この役目は誰にも譲らない。  クラウディア様の絵を破壊したラークを真似て、私は両手で固定した肖像画に思いっきり右膝を叩き込んだ。  肖像画は真っ二つに割れて、ドラセナ王妃の身体が分断された。  ごめんなさい、王妃様。  私は割れた肖像画を抱きしめて、亡き王妃様に心の底から詫びた。  ごめんなさい、ルカ様。あなたの宝物を壊してしまいました。  後で謝りますね。何度でも謝ります。  ――でもどうか、これでノクス様の呪いが解けますように。 「よくやった」  ぽんぽん、とラークが私の頭を軽く叩いた。  苦笑で応えた直後、ギャラリーに十五人もの騎士たちがなだれ込んできた。
/224ページ

最初のコメントを投稿しよう!

766人が本棚に入れています
本棚に追加