01:目覚めれば王子様

5/37
前へ
/224ページ
次へ
 手の甲で垂れた血を拭い、地面に両手をついて上体を起こす。 「ロスタリア帝国で……自律型魔導兵器に誤射されたときは、もっと痛かったっ……! 頑張れステラ、気合と根性があれば、大抵のことは、なんとか、なるっ……!!」  両手と左足を使って這うように移動し、崖に背中を預けて座り――そこまでが限界だった。  ……もう無理。  どんなに頑張ってもこれ以上身体が動こうとしない。  座っているだけで精いっぱいで、気を抜くと倒れてしまいそうだった。  血が足りないのか、視界が暗い。  頬を撫でる夜風がやたら冷たく感じる。  ――そうだ、指輪は無事かな。  私はずきずきと痛む傷だらけの右腕を動かして、服の襟元に手を突っ込み、黒い紐の先にある指輪を引っ張り上げた。  良かった、ちゃんとあった。  赤い魔石が象嵌されたこの指輪は「ルカ」と名乗った隣国アンベリスの騎士が助けて貰った礼に、とくれたものだ。  隣国……いや、国境である山から転落したのだから、もうここはアンベリス王国領内か。  ルカは今頃どうしているかな。  夜も遅いし、寝てるかな――あれ?
/224ページ

最初のコメントを投稿しよう!

768人が本棚に入れています
本棚に追加