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「ふえぇ! もうこんな時間なのぉっ!?」
声変わりも終えた高校生だが、子供のような気弱な叫びが聞こえた。
「なんでもっと早く起こしてくれないのぉ?!」
叩き起こされた彼は素早く着替えるか、または学生服のまま寝ていたようで制服を身に纏い慌ただしく階段を駆け下りてきた。
「英須、朝メシ食ってけ」「そんな時間ないよ!」
「育ち盛りの高校生がそんな事言うな。ほれ、おにぎり、母さんが作ったから学校で食べろ」
「ありがと、じゃ、行って来るよ」
「気を付けていけよ」「分かってるよ!」
「英須じゃない。リオちゃんに言ったんだ」
この騒がしい5分間もいつもの見慣れた光景だ。
学校に遅刻してはならないと走って行くしかない。
「英須、また夜遅くまで遊んでたの?」
「いや、あの…昨日の夜、テレビ観てたら急にアイデアが出て来ちゃって…気付いたら(深夜)2時になってた…」
彼が夢中になっているもの、それは彼の父親も夢中になっていた(いる最中かもしれない)トレーディングカードゲーム(トレカ)だ。彼の父、冒斗さんは昔は凄い人だったようだけど、現在は現役を引退しているので詳しい事はよく分からない。
「そう言えば数学の宿題出てたけどちゃんとやったの?」「ふゎぁっ! すっかり忘れてた! リオちゃん、後で見せて…」
「……仕方ないわねっ」
なんだか放おっておけない…それが増田英須と言う人間だ。
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