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「うわぁっ!」
英須が急に転けた。小さな身体にはそぐわない大きなバッグを抱えていたからではない。何があったか後ろを振り返ると、そこには彼が居た。
「英須ぅ、ちゃぁんと足元見て走れよぉ?」
どうやら彼が足を出して英須を転けさせたようだ。
「丈夏、アンタ一体何のつもりなの…!」
私は敵意を剥き出しにして三朝丈夏に食ってかかる。英須を放おっておけないのは私だけじゃない。丈夏もその一人だからだ。
「朝っぱらから彼女連れなのが気に食わねーだけだよ」
「そう言う事やってるから女の子が寄って来ないのよ!」
理不尽な理由でいちゃもん付けてくるんなら、こっちもそれなりに応戦する。英須は激しく転倒した勢いでバッグの中身を路上にぶちまけており、急いで掻き集めていた。
「さ、英須、行くわよ。こんな奴に構ってる暇なんて無いわ」「わわ…ちょっと待って! カードが足りないっ!」
教科書やノートよりも大切なカードの枚数を数えており、何度見ても足りないようだ。
「遅刻しちゃうわよ! 丈夏のせいでっ!」
私は当て付けのように言ってやる。
「……先、行けよ。足りねー分は俺が探していてやるからよ…」
丈夏は良心の呵責を感じたのか急に素直になった。最初からそんな事をしなければ良かったのに。
「アンタも同じ学校でしょ!?」
「俺は最初から遅刻するつもりだよ。さっさと行けよ」
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