時代めぐりて。

3/3
前へ
/3ページ
次へ
洋風の椅子に腰掛け、持ってきてもらった抹茶を飲む。 「あー、っで、ごめんね、突然呼びだして。」 「嫌構いませんが、何用で。」 「うわ、敬語だ、数年前まで啖呵を切ってたのに。」 「ここは明治です。江戸ではないゆえ。」 やはりこいつは入江薙刀だ。 「ふーん、で、紹介いる?こっちにいるのが、山縣ばか朋で、こっちが変態博文。」 「おいおいおいおい、名前違うし。変態じゃなくて女好き、なだけ。」 「一緒じゃん、」 「俺もバカじゃないから。」 「あっそ。」 「なんか、可愛そうだが、名前は?」 お前とも呼べない立場だからな。 「私?知ってると想うけど、入江薙刀。入江九一の恋仲。」 「そ、そうか。」 やはり。 入江九一は禁門の変で自害したと聞いているが。 「いま、入江九一は死んだ、って思ったでしょ。」 「っつ!?」 「「ぶっ」」 「有朋は死ね。」 「ストレートに酷くね?!」 当たり前だが総理大臣たちが戯れる様子はお目にかかれない。 「女と生まれたときと同じ状態で寝ている時なら殺られても構わない。」 「キモ文、っ黙れ。」 騒がしい。本当に。 「で、ご要件は。」 「あー、ごめんね、全くの私事なんだけど、私、あとが少ないわけ。」 薙刀の言葉に他の二人が笑った。 「言い回しが軽すぎ、もうちょっと分かりやすく言えって。」 「ごめんね、寿命が短いの。」 「は?」 「だからこいつ病気でさ、もう長くないって言われてる。」 そういう伊藤は、物悲しげだった。 「で、新選組のこと、教えて欲しい。」 「・・・・・・・・・・、知ってどうする。」 「特にないよ。思い残したこと。ただそれだけ。」 思い残したことか。 斎藤は独り笑った。 世が世なら。 俺は間者としてこいつのもとで話せたものを。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加