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時代めぐりて。
ここ。
麻布警察署。
幕末維新を生き抜いた男がいた。
藤田五郎。
元の名を斎藤一といった。
今日も平和な麻布警察署。
そこへ一人の男が訪ねてきた。
「すいませーん。藤田五郎警部っていますか?」
表にいた警官がじろりとにらみつけるが臆することなく男はニコニコしている。
「私だが。麻布警察署警部。藤田五郎だ。」
「初めまして。すいませんね。突然。色々都合上私の名前はここでは言えないんですよ。有名人だからね。で、藤田さん、いや、「斎藤さん」にお話があるんですよ。今日の夜。ここの住所まで来てください。取って食ったりしませんから。来なかったら三番隊を率いてたものとしてどうなんでしょう。」
紙を渡しながら男は挑発的な口調でいった。
「ちっ。」
返事をする前に男は去っていく。
「藤田さん?」
後輩のような警官が、紙を覗く。が顔を真っ青にした。
「藤田さんなんかしでかしました?ここ山縣有朋邸ですよ。」
「は?!」
「嘘だろ?」
「時の総理大臣じゃないか。」
「いや今のは山縣有朋じゃない。」
警官がざわめく中、懐かしいあの頃と変わらず、一人、藤田だけは職務に徹していた。
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