拾う

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「チッ」    舌打ちした征也が車を止めた。ドアを開け、傘を差し、車を降りる。傘を差しているのにすぐにびしょ濡れになった。 「チッ…」  また舌打ちをした。ぶっ倒れた人物へ向かって、長い足でゆっくり歩いて行く。  そいつは若い男のように見えた。黒いTシャツとブルージーンズ。バッグやカバンは見当たらない。  死んでいるのか、と思ったら、その男がゴロンと仰向けになった。濡れた髪が張り付いているので顔立ちはわからない。目をつむっている。小さな耳に安っぽいピアスが光っている。 「おい。あんた。おい」  投げやりな彼の呼びかけに、男がうっすらと目を開けた。 「あ、はい」  女のような、高い声で返事があった。征也はまた小さく舌打ちをする。 「何してんだ」 「僕ですか?」 「僕ですか、じゃない。こんな大雨の中で寝転がってどうしたんだと聞いているんだよ」 「動けなくて…」 「病気か?具合が悪いのか?」
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