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「いえ。そのう。三日ぐらいなんにも食べていなくて」
「はあ?」
要するに体力が落ちて動けなくなった、ということらしい。
「この先の、坂を登ったところに俺の家がある。来るか?」
「えっ?」
「ここで寝ていたら邪魔だ」
「ああ。そうですね」
起きようとしてまた寝転がった。
「起きられません」
「…めんどくせえな」
しゃがんで起こしてやる。ふらふらしている痩せた体を支えて立たせる。
「すみません」
「俺までずぶ濡れだぜ」
「ごめんなさい」
文句を言いながら車まで戻る。謝っている男をサイドシートに乗せてやる。
「名前は?」
「僕ですか?」
「あんたしかいないだろうが」
男に言いながら、乱暴にタオルを渡す。
「スミカです。純に夏って書いてスミカ」
「へえ」
自分から聞いたくせに、気のない返事をした。ギアを入れ、車をスタートさせる。
「車、濡らしちゃってごめんなさい」
「まったくな」
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