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Ⅹ.テンション高めの花
僕はカバンを肩にかけると、補習室のドアの前に立った。
そして勇気を出して言った。
「あの、今日は、志田さんと話せて……楽しかった」
志田さんは自然な笑顔で返してくれた。
「私も楽しかったー。ねえ、また来てよ」
「いやまた赤点はちょっとキツイかも」
「えー残念。エリート部屋に戻ってしまうのか……」
僕がもじもじと頬をかいていると、志田さんがずいと近づいてきた。
「エリート部屋に戻るのはいいけど、コンタクトにはしちゃ駄目だよ」
「え? あ、うん。僕は眼鏡好きだから、しないよ」
そう返すと、志田さんは満足そうに笑った。
***
僕はその日、本当に志田さんのことが好きになった。
考えられないくらい、好きになった。
だから僕は暴走してしまい、次の実力テストでも、赤点を取ってしまった。無論、志田さんに会うために。志田さんと話すために。
だけど補習の日、補習室に志田さんの姿が見えなかった。
なんとまあ、志田さんは補習を回避していたらしいのだ。
こんなことなら、いつものエリート部屋で良かったのに、僕は本当に暴走して馬鹿だな。
補習室から外を見ると、体育館の横にエリート部屋のメンバーが集っていた。
なんとその中に、志田さんの姿を見つけた。
志田さんは窓際の僕に気付くと、テンション高めの声で、こう叫んだ。
「かんがえることは、おなじだねーーーー!!!!」
■おわり■
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