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Ⅳ.若気の性
志田さんは、見た目に反して……と言うとルッキズム的な問題になってしまいそうだけれど、若干十六歳でしかない僕にとって、その華美な姿から繰り出されるそのフェアーな言動は、意外でしかなかった。
一言で表せば「良い人」なのだ。
それに、繰り返すがここは進学校。志田さんだって高い倍率をくぐり抜けてここへ通っている猛者である。勉強だって不得手ではないはずだ。なのに彼女はまるで勉強をしている気配がないし、校則だって守っていない。
僕は真剣に頭を悩ませた。
そして一つの結論として導き出したのが『働きアリの法則』というやつだ。
働きアリを観察すると、真面目に仕事をこなす者と、サボってしまう者に分類することが出来るらしい。そして不思議なことに、複数の巣から「真面目なアリ」だけを集めて『勤勉オールスター』を作ったとしても、なぜか必ずサボる者が現れてしまうらしい。
逆に複数の巣から「サボり魔」を集め、崩壊必死、日々ストライキ状態の働きアリ軍団を作ると、なぜか必ず「真面目なアリ」が現れるという。そして不思議なことに、どの巣も「働き者」と「サボり魔」の割合は概ね一致する。この現象を総じて『働きアリの法則』と呼ぶらしい。
これを「高校」という『巣穴』に重ねるとどうなるか。
真面目に勉強に励んできた集団が、受験を経て一つの集団となる。するとなぜか、一定の割合が不真面目な生徒へと変わってしまう。逆に不真面目な生徒が集まる高校においても、一定の割合が真面目な集団になったりもする。
僕は志田さんは、その「割合」に含まれてしまった人なのだと思っている。本人の意志に関係なく、法則の引力に導かれてしまっただけなのだと。
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