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Ⅴ.新手の馬鹿
現在うちのクラスでそんな風に「不真面目」とカテゴライズされてしまうのは、正直言って志田さんくらいのものだ。
だから抜き打ちで月に数度ある実力テストで赤点を取るのも、ほぼ志田さんだけである。だからテスト返しの後「また私一人で補習じゃん」とおどけて見せるのが、一種の志田さんの持ちネタになっているくらいだ。
そんな彼女と僕とでは、色々な点で釣り合わないし、そもそも接点を持つことが難しい。先程のように声をかけてもらえなければ、取り巻きの多い志田さんには、近づくことすら出来ない有様だ。
美術室横の美術準備室、またの名を『補習室』。うちのクラスでは、実力テストで赤点を取ると、その教室で放課後に補習を受けさせられる。志田さんはその『補習室』の常連で、個人的に確保しているロッカーまであるらしい。
僕はと言えばその逆で、実力テストの成績優秀者のみが選ばれる『進学講習』の常連メンバーである。体育館の隣りにある記念講堂で行われるこの講習に選ばれるということは、進学校である本校にあって尚エリートであることの証明なのだ。この講習が行われる記念講堂は、別名『エリート部屋』と呼ばれる程に尊ばれている。
補習室とエリート部屋の常連が、交わることなどないのだ。
かと言って志田さんが好成績を叩き出してエリート部屋に来てくれることなど、正直言ってまずないだろうし、僕が赤点をとることだってあり得ない。だからこうして、その接点のなさに頭を抱え、悶々と過ごす日々である。
……いや、待てよ。
志田さんをエリート部屋に呼ぶのは難しくとも、僕が補習室に行くことは、実は造作もないことなのではないだろうか?
実力テストで、実力を発揮しなければいいのだ。そうすれば僕は晴れて(?)赤点となり、補習室行きとなる。
「――そうだ、補習室へ行こう」
僕はそう呟くと、このクラスでは志田さん以来となる『新手の馬鹿』になることを、心に決めたのだった。
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