第三章

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「ほう…。これは素晴らしいな」  蓮華の容姿に男は感嘆の声を漏らした。周りの白いローブを身に纏った者たちも、舐め回すように蓮華の頭から足先まで見つめている。  纏わりつくような視線が不快だった。大勢の大人に囲まれ、まるでサーカス小屋の見世物になったような気分になる。  こいつらのような人間は、その醜い自尊心でこちらをねじ伏せようとする。この身を、心を、我が物顔で支配しようとする。そうすることが当然だと信じて疑わない。  はなから奴らは、こちらを人とも思っていないのだろう。芸をする動物に手を叩いて喜んでいるのだ。 『自分の意志など捨てろ。その身は、その力は、我らの為にあるのだから』  遠い過去の記憶が蘇り、蓮華はギリッと奥歯を噛みしめた。  くそったれが。虫唾が走る。  だから決めたのだ。こちらを馬鹿にしてくる奴らを見返してやると。下に見て油断しているのなら、逆に欺き、利用してやる。そうして己の愚かさを知らしめてやるのだと。  目の前に立つ一見無害そうな男は恐らく、この組織でもそれなりの地位のある人物だろう。運が良ければここのボスだ。取り入るには絶好のカモ。  一度顔を俯けた蓮華は、次にはきゅっと眉を下げた無防備な表情を浮かべ顔を上げた。 「ぼく、どこかに売られるの…?」  まずは少しでも情報を得る為相手を油断させようと、多少大袈裟に幼い演技をする。  途端、何故か目の前の男がピシリと硬直した。 「ショタ…」 「え?」 「いや、なんでもないよ。ああ、この子の拘束を解いてあげなさい。大丈夫、売ったりなんかしない。寧ろこれは救済さ」 「救済…?」 「禊を終えた私たちと触れ合えば、まだ成人していない子供なら邪を取り払い事ができる。私たちは邪に囚われた子供たちを連れてきては、そうして救済しているのさ」  デタラメな説明に反吐が出そうになる。要するに宗教だとかなんとか理由をつけて、単に子供とヤりたいだけの集団ってわけだ。 「わぁ、すごいね。みんないい人なんだ」  頭の中での暴言とは打って変わってアホっぽく拍手をして見せれば何故か頭を撫でられた。男のこちらを見る目がやたらと生暖かい。
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