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足は自然と路地裏へ向いていた。
気まぐれ、とでもいうのだろうか。
もしかしたら、昨日死んだ相棒のせいかもしれない。
普段なら、こんな浅はかな行動をとるわけがないのだから。
「ぅぉ…」
倒れている相手の顔を覗き込んで、陸翔は小さく声を上げた。
艶のある深緑の髪。陶器のような白皙の肌。伏せられた長い睫毛。まるで神の手で緻密に計算し創られたようなまでの美貌に面食らう。
少女……いや、少年?
まだ10代半ばと見られる彼は完全に意識を失っているようだった。怪我をした様子はないが、その顔は白いを通り越して青白い。
「おい。しっかりしろって、おい」
軽く揺すってみるが反応はない。陸翔は眉間に皺を寄せ唸った。
自分は一体何をしているのか。人に情けなどかければ、それだけ付け入る隙を与えることになる。
万が一これが罠だとしたらどうするつもりだ。
自分はすっかり、あのお人よし野郎に毒されてしまったらしい。
秩序なんてないも同然の世界。こんなべっぴんさんを放っておけば、犯されるか売り飛ばされるかするのは時間の問題だろう。
関わったのが運の尽き。このまま放っておくのも目覚めが悪い。
未だに起きる様子のない美少年。
陸翔は散々迷った結果、渋々その小さな体を抱き上げるのだった。
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