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「充から改めて話があると思うけど、どうせ碌な説明をしないと思うから事前にと思ってね」
笑みを浮かべながらサラッと毒を吐いた秀さんに苦笑する。
充とは、この組織【曇天】のボスのことだ。
なんでも秀さんはボスと幼馴染らしく、今はボスの右腕として組織を切り盛りしてくれている。秀さんは基本穏やかな人だが、何故かボスのこととなると闇が深くなる節がある。
「単刀直入に言えば、新しいパートナーについてだよ」
「……パートナー」
「昨日の今日で陸翔には酷なことしてしまうけど、丁度今日から来る新入りがいるんだ。充がペアを組ませるなら陸翔とがいいって」
「能力相性とかってことすか」
「理由は俺も分からない。それで今、充が新入りを迎えに行ってるんだけど」
「え。ボス直々に?」
「あいつが見つけて声をかけたらしいんだ。あれ、確か陸翔も勧誘された側だったっけ」
「まぁ…。ボスからされたわけじゃないっすけど…」
頭を過ったのは、憎らしいほどの満面の笑みを浮かべてこちらに手を差し出す男の姿。もう二度と握り返すことのできない手だ。
取り敢えずここでボスが新入りを連れてくるまで待機しておいて欲しいとのことだ。
新しいパートナー。まだアイツが死んだことも実感がないまま、時とは無常に過ぎ去っていく。いなくなった相手を引きずっていられるほど、この世界は優しくはないから。
「それで陸翔さん。その子はどうしたんですか?」
「…ッ、話を掘り返すなモヤシ野郎…!」
「ひぃ…っ、ご、ごめんなさい…!」
折角話題を逸らしたというのに、今ので秀さんもすっかり聞く気満々になってしまった。
誤魔化しの効かなくなった状況に、陸翔は盛大に顔をしかめる。
「た、偶々、倒れてるのを見かけて…」
「「見かけて?」」
「む、無視するのも夢見が悪りぃから…」
「惚れたんだね」
「惚れたんですね」
「ッ、ちげーし!断じてちげーし!!」
悟ったような顔をする2人に反論しようとした、その時。
背後から鋭い殺気を感じたかと思えば、己の喉元に刃物が突きつけられていた。
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