第三章

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 手招きする司祭を本能が拒絶する。  ソファに座ったまま動けないでいる蓮華に、司祭は困ったように微笑んだ。 「いくら君でも最低限の検査は必要だ。そうしなければ儀式が行えない」  してくて結構と声を大にして言いたいが、新たにやって来た二人の男たちに意識が向いた。司祭は三人を引き連れて蓮華の元へと歩み寄る。  目の前で立ち止まった司祭を睨み上げる。せめて心だけは屈せずにいたかった。  両側から近づいてきた男たちに腕を掴まれ立たされた。そのまま服を剝ぎ取られそうになり、抵抗すると有無を言わさず取り出した刃物で衣類を引き裂かれる。 「乱暴に扱ってはいけませんよ。傷一つ付けないように」  ただ此方を眺めるだけの司祭が穏やかな声で指示する。その眼は一見優し気で慈愛に満ちたものだが、その奥には悍ましい何かが潜むようで身が竦んだ。  慣れた手つきで一糸纏わぬ姿にされる。両腕を掴まれたままでは、裸体を隠す術もない。  それからは体を隅々まで湿った布で拭かれ、何かを確認するようにあちこち確認された。  羞恥、恐怖、怒り。様々な感情が渦巻き、蓮華は体を震わせる。 「傷跡が所々ありますね」 「そうですか。この穢れた世の中では仕方のないことですが、やるせないですね。透き通るような白皙の美しい体なのに」  ねっとりとした司祭の視線に堪らず顔を逸らしていた。  この男こそ、穢れた世の中そのものではないか。自らを崇高なものだと信じているのならば、とんだ狂人である。 「…っ⁉」  その時突然、尻撫でられた。いやらしい手つきに怖気が立つ。  背後に立つ三人目の男だ。耳元に生暖かい不快な息遣いを感じる。 「ああ、なんて滑らかな肌だ。こんなの女の体だってそうお目にかかれないぜ」 「言葉を慎め、司祭様の前だぞ。お前はただ自分の役目をこなせ」 「へいへいっと」  悪びれた様子もなく返事をした男がその場にしゃがむ。  一体何をと振り返ろうとした時、いきまり尻を鷲掴んだと思えばそのまま左右に押し広げられた。 「な…っ」  驚愕し拒もうと身を捩るが、両側の男たちの手からは逃れられない。  まじまじと己の秘部へ向けられる視線を感じた。激しい怒りと屈辱感に体が震え出す。 「ん~、きれいな形と色だなぁ。キュッと閉まってるし、こいつは処女だろうぜ」  その直後、後ろを生暖かい何かが触れた。 「…っ」    舐められた。そう気づき頭が真っ白になる。 「ああいいなぁ。挿れてぇなぁ。こんな上玉、滅多に拝めない」 「おい、いい加減にしろ。罰せられたいのか」 「あー分かったよ。チッ、つれねぇなぁ」  そう言って往生際悪く蓮華の尻を撫でてから男は立ち上がる。次には無地の布で作られた簡素な衣類を着せられた。下着はなしだ。 「これで検査は終わりです。さあ、他の子供たちの元へ行きましょうか」  そう司祭が告げると、両側にいた男たちに引きずられるように歩かされる。  そんな中で、不覚項垂れた蓮華の瞳が鋭い光を放っていた。
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