第三章

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 幸いにも同乗させてもらえた車で辿り着いたのは古びた教会だった。  運転手の男性に例を言い車を降りた二人は、周囲を警戒しながら建物に近づく。こんな片田舎のボロ教会だ。監視カメラの類は見当たらない。 「おい、ほんとにここなのか?」 「は、はい。発信器が動きを止めたのは、この建物内で間違いないと思うんですけど…」  なんにせよ、とりあえずは調べてみなければ始まらない。  教会の裏側から前へと壁伝いに進んで行けは、やがて人の声が聞こえてきた。足を止め聞き耳を立てれば、入り口に立つ男二人が何やら会話をしているようだ。  見張りなのだろうか。こんなボロ教会に見張りとは妙なことだ。 「おい聞いたか。新しく連れてきたガキが大層別嬪らしいぞ」 「ああ、なんでも儀式では司祭様が禊を担当するんだろう?すっかりお気に入りだ」 「いいなぁ。俺もおこぼれを頂戴したいもんだぜ」 「……おい小雨」 「……はい」  会話を聞いた二人は短く言葉を交わし、再び足を進める。そうして見張りたちの前へ堂々と姿を晒した。 「なっ、だ、誰だお前たちは!」  突然の侵入者に見張りが動揺を見せる中、陸翔はにこりと笑みを浮かべる。 「あのー、すんませーん。ちょっと今の話…」  言いながらパンッと掌に拳を打ち付け、笑顔はそのまま凍てついた目を見張りに向ける。 「詳しく聞かせてもらおうか?」
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