第一章

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 助けてやったのにいきなりナイフを突きつけられ、それについての謝罪もない。  可愛さの欠片もないクソガキ。第一印象最悪。こんなのが新しいパートナーなんて、何の罰ゲームだ。 「歳は16。実力は申し分ないし、初めから普通に任務をこなしてもらうつもりだから、よろしくー」  16歳。幼少のうちに命を落とす確率が高いこの世界ではそれなりに大人の部類に入る歳だ。  とはいっても自分より3つ下、しかもクソガキがペアなど快く受け入れられるわけがない。 「ボス!なんでコイツのペアに俺をあてたんすか!根拠は!」  ほぼ睨みつけるような陸翔の視線にもどこ吹く風で、充はヘラヘラと答える。 「んー、勘!」  あ、終わった…。  絶望する陸翔にあわあわする小雨と、大きくため息をつく秀。  蓮華は一度も声を発さないまま、先ほどの殺気が嘘のように無気力な目をしていた。  何の関心もない、何も見えない暗闇のような瞳。  この目には馴染みがあった。昔の自分が、同じ目をしていたから。 「…あークソ、面倒くせぇ」  厄介なことを知ってしまった。他人のことなど深く知らない方がいい。その方が関わる苦労も減る。失った時の傷も、浅く済む。  ちらりと見遣ったボスが、嫌な笑みを浮かべていた。まるで何かを企むような、悟ったような笑み。  苛立ちを覚えて舌打ちする。考えるだけ無駄だ。あーだこーだ迷うのは向こうの思う壺である。  昨日の記憶が蘇る。瓦礫に潰されて尚、庇ったガキの心配をしていた相棒。いや、今は元相棒か…。  おい、お前の代わりにえらいのとペアを組まされたぞ……(たくみ)。  心の中で呼びかけても、当たり前のように返事は返ってこない。ただ満面の笑みを浮かべた巧が頭をよぎるだけだ。  アホらしい。誰かに思いを馳せるなど、自分はいつからこんな軟弱者になったのか。  他人など捨て置け。この新入りがどうなろうと、知ったことか。  そう心の中で吐き捨て、陸翔は無理やり思考に蓋をした。
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