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そのまま髪飾りを買うことなく、城へと戻る。
モヤモヤとした気持ちは膨らんでいくばかりだ。
彼女の心からの笑顔を向けられたい……しかしファビオラを拒絶しようとしていた自分にその資格はないのかもしれない。複雑な想いは募っていく。
そしてパーティーの日を迎えた。
ファビオラを迎えにいくために馬車に揺られながら考えていた。
(僕は……彼女に相応しいのだろうか)
そんな考えを掻き消すように、いつものように笑みを浮かべる。
すると屋敷から出てきたのは想像を絶するほどに美しいファビオラの姿だった。
照れたように俯くファビオラに見惚れていたが後ろにいるエマは力強く頷いた。
久しぶりにファビオラに触れた瞬間、このまま自分だけのものにしてしまいたいと強くそう思った。
マスクウェルは馬車の中でファビオラの赤らんでいる頬を見て窓を開けた。
髪が風に揺れるたびに甘い香りが漂ってくる。
愛おしさだけが募っていく。
ファビオラにドレスが似合っているかどうかを聞かれて、以前ならば恥ずかしくて誤魔化すように冷たいことをいっていた。
「とても……とてもよく似合ってる」
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