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加奈子は小さな声で、いいよ。と言った。
加奈子の話はろくに聞かずに、夏の終わりはやっぱ海だろーと
言って、近くの海水浴場のなまえを告げた。
結局、会うのは夕方になったので、使いきれなかった花火を持って
約束の浜辺に行った。
海風は冷たく、やたらと波の音がでかかった。
閉められた海の家や捨てられたバーベキューの残骸が
なんだか虚しく感じられた。
振り向くと、いつ来たのか少女がじっとこちらを見て立っていた。
すぐには思い出せなかったが、加奈子だ。
高校2年とは思えない幼い感じがしてちょっと緊張した。
「わー久しぶり、元気ー?変わらないなー・・・」
加奈子はたいして返事もせず、静かに笑っていた。
何を話していいかわからず、夏休みに遊び倒してふざけた毎日の
話を聞かせた。
ふーん。ふーん。と聞いていた加奈子は小さな声で
「相変わらず、親友はいいひんのやね」と言った。
少しむっとした。
・・そうかもしれない。
友達がたくさんいると自分でもお姉ちゃんに自慢していた。
でも、ちょっと気が付いていた。
何度も誘いに乗ってくれない友達ばかりだったし、
何人かでいても一人で浮いているときが多い。
心がちょっとイラついた。
「加奈子とはいつ遊んだっけ?あんまり覚えてないかも」
ちょっと意地悪に聞いてみた。
「遊んだ覚えはないよね」
そういいながら、加奈子は花火を袋から出し、火をつけた。
「何それ・・・」
話に困って、次から次に火をつけ楽しそうに笑ってみせた。
色とりどりの火が小さな音を立てて、次々に消えていく。
「ああ、線香花火だけになったな」
「なんで、線香花火って最後に残ってしまうかな」
二人で小さく並んでゆらゆら揺れる先っちょに火をつけた。
じっと動かさないように。
火玉が落ちないように大きく大きく膨らむように。
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