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「別に忘れてたって言うか・・。えっと。
海に消えたってなにが?私、何か捨てたりとか・・。えっと」
まるで、何も聞こえていないかのように、
最後の1本になった線香花火に加奈子はそっと火をつけた。
「火の玉を大きくしてギリギリ落ちる前にお願い事するんやて。
叶うといいな。
言うで。
麗奈が私の大事な友達になってくれますように・・・」
咄嗟に頷いた。
「もちろんや。ずっと仲良しでいよ。あの頃はごめんな。
これからは、一緒にいよ」
言えた。ほっとした。許してくれる。
ぽとん
と、火玉が砂の上に落ちた。
「 今日で夏も終わるね」
最後に聞いた加奈子の言葉。
急に体がふわっと宙に浮かんだ気がした。
加奈子のお墓の前に倒れ息絶えている私が見つけられたのは
それから2日もたったまだ日差しの強い午後だった。
夏の終わりに
さまよう加奈子はやっと友達を手に入れた。
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