東方前線へ

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 軍用トラック数台に渡って運び込まれた機械竜の戦闘用ボディに基地の駐屯兵は度肝を抜かれた。  空けておいて貰った格納庫にそれを搬入する傍ら、白い竜と荷物を担いで出てきた他士官より二回りは小さな姿に、誰もが視線を向ける。  あまりに華奢な姿に、彼女に集まる瞳は強い戸惑いを映していた。 (そりゃそうだよね…)  予想はしていた反応だったが、何とも言えない殺伐とした雰囲気にその視線が棘のように感じた。 「シャンティス少佐!」  そう呼ぶ声に近頃は何処か安堵すら覚えていたけれど、ここに足を踏み入れた時点でその馴れ合いは剥ぎ取らねばならなくなった。  機敏に駆け寄り、左腕でセルシオンを抱えながら様になった敬礼を行った。 「ハインブリッツ大佐、ご要件を伺います」 「一時間半後に師団長執務室に来て欲しい。スペンシア少将がお会いしたいそうだ」  予期せぬ基地のトップからの呼び立てである。  カルディナの胸に緊張が走った。  了解の返事と共に再びの敬礼を行い、割り当てられた官舎へと荷物を置きに急いだ。  認識証の個人番号を頼りに上級士官の官舎を駆け上り、予め渡されていた鍵をドアノブに差し込む。  開いたドアを乱暴に開けてセルシオンと共に中を確認。比較的綺麗な室内と設備に安堵を覚えつつ、荷解きは後回しにして貴重品をポケットに押し込んだ。 (警戒し過ぎかも知れないけど…)  そう思いつつも防犯として小脇に抱えて来た蝶型のセルシオンの器に魂授結晶を纏わせ、部屋の各所にセットした。  究極兵器の使い手として拉致や盗聴の危険も否めない。  侵入者があれば撃退及び確保出来るように対処した上で、カルディナは分刻みな次の予定へと向かった。
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