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取り敢えず、打開策が見えた所で今日の稼働試験は終了となり、戦闘用ボディから魂授結晶を剥がして狼の器に移し、皆で片付けに追われていた時のことだった。
「カルディナ、ちょっと良いか?」
不意に大佐に呼び止められ、振り返った彼女はしまったと顔を引き攣らせた。
試験の間、洗剤と一緒に盥に漬けていたびしょびしょの軍服を手に、大佐と他士官達が険しい顔をしていた。
「これは何だ?今日は美術の授業は無い筈だろう?」
一先ず、何故に貴方が今日の授業内容を知っているのかと問いたい―――が、問えない。
威圧的な真剣な眼差しで問い質す言葉にどう答えるべきか躊躇った。
「あー、何というか多分クラスメートの悪ふざけと言いますか…」
出来るだけ穏便に済ませたくて言葉を濁した。
「これが悪ふざけのレベルか?器物破損と名誉毀損の間違いだろう?」
そう言われては返す言葉もない。
時間がなくて落とし切れなかった赤系統の絵の具はズボンの股下を中心に染み付いていた。
恥を掻かせようとしているのは明らかだったが根気強く洗えば落ちるものだったので気に留めていなかった。
「一先ず、学校には確認を取らせてもらう。今日中に時間を設けるから、それまでに他にやられた事があれば全て書き出しなさい」
通信機を片手に端的に言い残し、大佐は次に予定している参謀本部との定例会へと行ってしまった。
―――これは大事になる。
嫌な予感がしてならなかった。
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