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娘を想う養父はキレる
翌日、午前の授業が終わって間もなく何故か図書室で待機するよう教員から言われた。
そろそろ訪れてみたいと思っていたので良い機会ではあったけれど、貸し切り状態で何とも言えない気持ちになった。
昨晩の内に学校で起きた異変については大佐に根掘り葉掘り吐かされた。
その際の顔が完全に怒っていて洗い浚い白状するしかなかった。
鬼畜大佐と言い呼ばれる一面を見せられては、流石のカルディナも黙秘する勇気はなかった。
(イジメより大佐の方が怖いんですけど…!)
気晴らしにと手に取った工学に関する本数冊をテーブルに置き、怒りのまま椅子に乱暴に座った。
虐げられることに慣れてしまっている彼女には、上官である大佐の怒りの方が余程恐ろしかった。
暫らくして案内された講堂にはクラス担任と学部長に学園長、そしてイジメに加担した生徒全員が集められていた。
窒息しそうな場の空気に、カルディナは早く事が終わることを祈った。
いつもよりは抑えているものの鬼畜大佐の怒気を蒔き散らす養父に、教員は完全に縮こまり、当事者である女学生の何人かは何故ここに居なければならないのかとばかりに不貞腐れ、全く反省の色が見受けられなかった。
「お嬢さん方、君達のしたことは私の娘を貶め、辱める行為だ。カルディナは君達の玩具ではない。君達と同じ一人の人間なのだよ。罵倒されれば怒りを覚え、傷付けられれば痛みを感じるんだ」
淡々と告げられた言葉は、かなり高圧的だった。
言葉を選んでいる方ではあるが、これが士官ならば絶対に震え上がっている。
「だからちゃんと謝るって言ったじゃない…」
若さと無知は恐いものが解らないらしい。
零れたその一言に、大佐は冷ややかに微笑んだ。
「そうか…、ならば君等にはカルディナに正当な謝罪の意思があるということだね?」
舐めきった態度の女学生の前に歩み寄り、大佐は小首を傾げる。
当人よりもカルディナが震え上がる中、女学生等は尚も事の重大さが解らないらしく、その場で白々しく謝罪の言葉を述べた。
「それが謝罪かい?そうか、君等にはその程度しかできないのだね…。仕方ない。面倒だが君等では話にならないようだから、弁護士を通して保護者にそれ相応の賠償を求めるとしよう」
尚も微笑みながら淡々と彼が言い放った言葉は生徒以上に教員を震撼させた。
「お、落ち着いてください。唯の子供の戯れではありませんか!」
「子供の戯れ?あれが戯れだと?」
弁明しようとした担任教員だが、それは彼の怒りに油を注いだ。
「貴方の言う、その戯れでカルディナは支給された軍服を処分せざるを得なくなったんですよ?軍服は国民からの税で賄われる物資だ。彼女等のしたことは公務執行妨害にも当たると分かっているのですか?しかも、この子は十四歳で義務教育課程にある。勉学に励むのは国家が定める義務であり権利でもあり、それを脅かすことは立派な犯罪行為だ。刑事事件として扱っても良いくらいだが?」
有無を言わせぬ睨みを利かせ、大佐は正論で担任を黙らせた。
あまりの鬼迫に良い加減、事の重大さが分かったのか、生意気だった生徒等の顔が見る見る青ざめる。
「君達も学校の中で行われたことだから形だけ謝れば許されると思ったのかね?大人気ないと思うだろうが、こちらは可愛い娘を傷付けられたのだからね。徹底的に戦わせて貰うよ?」
悪魔的な微笑を浮かべ、カルディナの肩を抱きながら大佐は一同を睥睨する。
止めを刺すように気味悪いくらいに口角を上げた彼は、学園長に対して後日改めてこの件を調査の上、加害者側にはそれ相応の慰謝料を請求する事を告げた。
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