よるのかみさま

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「あーはっはっはっはっは! なにそれ! ウケる! 僕にそんなこと言ったの君が初めてだよ! あっはっは!」  怪物は腹を抱えて笑っている。あはは、あははは、笑いは止まらない。 「……バカにしてんのか」  顔をぐしぐしと袖で拭い、顔があるであろうフードのところに目掛けて睨みをきかせる。しかし、相手はびくともしない。 「違うよ! 新しいパターンだなって思って! 僕ね、ほら」  怪物はゆらりと手を広げる。 「『よるのかみさま』だから」 「お前が……!」  見つけた。あぁ、この怪物が、よるのかみさまなんだ。 「じゃあ、噂通り殺してくれるんだよなぁ?」 「……え?」  間抜けな声。アタシは固まる。え、だって、ミサキちゃんは「よるのかみさまに会ったら殺してくれるんだよ」って言ってたのに。アイツ……! だましたな!? 「そんな噂あるの? マジ、お嬢さんウケるね!」  かみさまはまた爆笑して、そして、こんなことを言った。 「僕はね。夜、出歩いてるつらそうな人に声かけてるの。それで、少しでも楽になってくれたらいいなって、お話聞いてるんだ」  優しい能天気なヤツだな。 「……あっそ」  ぶっきらぼうに返事をしても、相手は食い下がらない。 「だから、お嬢さんも聞かせてくれない? 何か悩んでるんでしょう?」 「べ、別に、アタシは……困ってなんかねぇし」 「泣いてたじゃん」 「……クソ。ばれてんじゃねぇか」  涙を隠すのも、下手なのか。アタシって本当に……。ぎり、歯を噛み締める。 「近くに公園あるからさ、そこまで行こうよ」 「……わーった」  かみさまはアタシの前を歩く。ゆらゆらしていて、でかい。やっぱり人じゃないんだなと改めて思った。
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