よるのかみさま

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 夜の公園は静かで、本当に誰もいない。ベンチに腰掛けると、かみさまはその隣に座った。おかしなことに、ベンチは軋まなかった。 「一回しか話さねぇから、聞いとけよ」  かみさまは「何を偉そうに」とかひどい言葉は使わずに、ただ頷くだけだった。 「アタシは……いじめっこだったんだ。小学校の時、だがな」 「わかる。そんな感じある」 「うるせぇ!」 「ごめんごめん」  両手を合わせて謝るかみさま。表情は真っ黒のくちゃくちゃでわかんないけど、なんだか苦笑いしている青年が見えた気がした。 「そんで、この口が悪さしてることがわかった。だから、中学では喋んねぇようにしてんだ。でも……」 「でも?」 「逆にいじめのターゲットになっちまった」  かみさまは「へー……そんなこともあるんだね」なんてぼやく。 「学校がもう、怖ぇ。新学期始まってからよ、またいじめられてんだ、アタシ。逃げてぇよ」  弱音を吐く。このかみさまの前なら、なんでも話せる気がした。 「その口で、彼らを苦しめてあげればいいんじゃないの? 再起不能にするのはお茶の子さいさいでしょ?」 「まぁ……できなくはないが、それは違うとアタシは思ってる。それって、ただの仕返しじゃねぇか。いじめじゃん。何も生まねぇ」 「へぇ? お嬢さん、えらいね。若いのによくわかってんじゃん!」  かみさまはアタシに拍手する。ぱちんぱちん、ぷすんぷすん、変な音がした。  アタシは「んなことねぇし」と口では否定したが、顔は少し熱かった。 「それで? 僕に殺してほしいって?」 「……ミサキに言われたんだ。クラスのボス。『かみさまに会って殺されてしまえ』って言われたんだ」 「えー! ひっどーい! マジで? そのミサキってヤツ、フツーにサイテーじゃん」 「……だよな。人に対して『殺されてしまえ』なんて言えるヤツ、頭おかしいに決まってる」  アタシは足をぶらぶらと動かす。足元で砂利が動く。  かみさまがアタシの顔を覗く。黒い闇がどこまでもアタシを吸い込んでいってしまいそうだった。
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