4人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
夜の公園は静かで、本当に誰もいない。ベンチに腰掛けると、かみさまはその隣に座った。おかしなことに、ベンチは軋まなかった。
「一回しか話さねぇから、聞いとけよ」
かみさまは「何を偉そうに」とかひどい言葉は使わずに、ただ頷くだけだった。
「アタシは……いじめっこだったんだ。小学校の時、だがな」
「わかる。そんな感じある」
「うるせぇ!」
「ごめんごめん」
両手を合わせて謝るかみさま。表情は真っ黒のくちゃくちゃでわかんないけど、なんだか苦笑いしている青年が見えた気がした。
「そんで、この口が悪さしてることがわかった。だから、中学では喋んねぇようにしてんだ。でも……」
「でも?」
「逆にいじめのターゲットになっちまった」
かみさまは「へー……そんなこともあるんだね」なんてぼやく。
「学校がもう、怖ぇ。新学期始まってからよ、またいじめられてんだ、アタシ。逃げてぇよ」
弱音を吐く。このかみさまの前なら、なんでも話せる気がした。
「その口で、彼らを苦しめてあげればいいんじゃないの? 再起不能にするのはお茶の子さいさいでしょ?」
「まぁ……できなくはないが、それは違うとアタシは思ってる。それって、ただの仕返しじゃねぇか。いじめじゃん。何も生まねぇ」
「へぇ? お嬢さん、えらいね。若いのによくわかってんじゃん!」
かみさまはアタシに拍手する。ぱちんぱちん、ぷすんぷすん、変な音がした。
アタシは「んなことねぇし」と口では否定したが、顔は少し熱かった。
「それで? 僕に殺してほしいって?」
「……ミサキに言われたんだ。クラスのボス。『かみさまに会って殺されてしまえ』って言われたんだ」
「えー! ひっどーい! マジで? そのミサキってヤツ、フツーにサイテーじゃん」
「……だよな。人に対して『殺されてしまえ』なんて言えるヤツ、頭おかしいに決まってる」
アタシは足をぶらぶらと動かす。足元で砂利が動く。
かみさまがアタシの顔を覗く。黒い闇がどこまでもアタシを吸い込んでいってしまいそうだった。
最初のコメントを投稿しよう!