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まだ小百合に一時間遅れるという嘘を伝えていない。
おそらく麗華は当日になって変更の連絡をいれたのだろう。
人力車の車輪が壊れたのも麗華の仕業とされたが、それは違う。偶然だったのだ。
車輪を直すには一時間ほどかかる。お茶会には小百合が応援しているバイオリニストが呼ばれるとあって、小百合は欠席せず、直ったら迎えに来るように伝え、侍女を伴って徒歩で向かう。
夜の七時とはいえ徒歩十分ほどの距離だ。無謀というほどではない。
もしかすると、人力車なら男たちは脅すだけで済ませたかもしれない。美しい着物姿の小百合を見て、気が変わった可能性もある。
いずれにせよ、落ち着いて考えれば阻止する方法はいくつもあるはずだ。
まず、時間と場所はわかっている。
男たちには、〝八十八夜のお茶会に向かう道中に狙う〟という伝えたし、原作でも事件は〝伯爵令嬢 八十八夜の凶行〟と報道された。
場所は涼風邸から橘邸へ向かう途中の公園だ。
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