□プロローグ

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 優雅な風貌からは血生臭さは感じられないが、武人の彼には左上腕部に戦闘でできた生々しい傷があるという。  文武両道、眉目秀麗。まさにスーパーヒーロー。  そんな人が自分の許嫁だなんて、麗華は幸せ者だと苦笑する。  もし麗華が優しい子だったら、彼と結婚できたのかなと、ふと思う。  でも無理だ。  過去を帳消しにはできないし、物語には悪役が必要で、麗華に用意されたのは悪役の席。  それは変わらない。――絶対に。  キュッと唇を噛んで扇を持つ手に力を込める。 (さあ、綺麗さっぱり片づけよう)  あと二メートルほどの距離に近づくと、流星が振り向いた。  目が合った途端、胸がキュンと疼く。  小説には女性たちの心を片っ端から溶かしてしまうと書いてあったが、表現に誇張はなかった。  長い睫毛に縁取られた美しい瞳から目が離せず、息を吸うのも忘れてしまう。  それなのに――。
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