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人力車に乗ると、後ろに畳んである屋根を顔がそとから見えないように深く下ろしてもらう。
「急いで出して」
「はいわかりました」
屋根で暗くなってから気づいた。手にしていたはずの傘がない。
(あっ、パラソル)
ショックのあまり、さっき落としてしまったらしい。
流星が呼び止めたのは、落としたパラソルをただ渡してくれようとしたに違いなかった。
(私を引き留めようとしたわけじゃない)
外国から輸入したすごく気に入っていたパラソルだった。
また買えばいい。
使いきれないほどお小遣いがあるのだから。
今日は小百合を虐めずに済んだ。
(よかったわ。これでいいの)
そう思うのに無性に悲しくて、赤いドレスの上にポタリポタリと涙が落ちた。
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