109人が本棚に入れています
本棚に追加
***
もといた椅子に腰を下ろした流星は、溜め息をつく。
手にしたパラソルは白いレースが幾重にもひだを作っていて、ぶつけたら簡単に壊れそうなほど恐ろく華奢だった。
そっとパラソルのハンドルをテーブルに引っ掛ける。
麗華の後ろ姿を思い出しながら、なにか怒らせるような発言をしてしまったのだろうかと考えた。
一緒にドレスを買いに行こうと誘ったのがいけなかったのか。
だとすれば、一緒に行きたくないほど嫌われてしまったということになる。
「どうした?」
流星に気づいた悦巳が席に戻ってきた。
「麗華さんの家に行くんじゃなかったのか?」
「ん……。彼女は用事があるらしい」
とは言ったものの、本当に用事があるとは思えない。
急に誘ったのだから仕方がないが、並んで歩きはじめたときは嫌がっているようには見えなかった。
「なにがあったんだ?」
自力では解決できそうもない。「実は――」と経緯を話して聞かせた。
「え? じゃあ小百合さんが今着ているドレスは」
流星は溜め息混じりにうなずく。
「だけど、なんであのドレスなんだ? どう見てもあれが似合うのは麗華さんじゃなくて、小百合さんだと思うぞ?」
「以前、小百合さんがあんなふうなドレスを着ていて、彼女がジッと見ていたんだ、そういうドレスが着たいのかと思って」
そのとき小百合が着ていたのは、薄い色合いのドレス。
最初のコメントを投稿しよう!