◇前進あるのみです

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***  もといた椅子に腰を下ろした流星は、溜め息をつく。  手にしたパラソルは白いレースが幾重にもひだを作っていて、ぶつけたら簡単に壊れそうなほど恐ろく華奢だった。  そっとパラソルのハンドルをテーブルに引っ掛ける。  麗華の後ろ姿を思い出しながら、なにか怒らせるような発言をしてしまったのだろうかと考えた。  一緒にドレスを買いに行こうと誘ったのがいけなかったのか。  だとすれば、一緒に行きたくないほど嫌われてしまったということになる。 「どうした?」  流星に気づいた悦巳が席に戻ってきた。 「麗華さんの家に行くんじゃなかったのか?」 「ん……。彼女は用事があるらしい」  とは言ったものの、本当に用事があるとは思えない。  急に誘ったのだから仕方がないが、並んで歩きはじめたときは嫌がっているようには見えなかった。 「なにがあったんだ?」  自力では解決できそうもない。「実は――」と経緯を話して聞かせた。 「え? じゃあ小百合さんが今着ているドレスは」  流星は溜め息混じりにうなずく。 「だけど、なんであのドレスなんだ? どう見てもあれが似合うのは麗華さんじゃなくて、小百合さんだと思うぞ?」 「以前、小百合さんがあんなふうなドレスを着ていて、彼女がジッと見ていたんだ、そういうドレスが着たいのかと思って」  そのとき小百合が着ていたのは、薄い色合いのドレス。
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