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『自分でも性格が悪いのは自覚しています』
今日のお茶会で出されている軽食や菓子類は麗華からの差し入れだと小百合が言っていた。
「彼女は変わろうとしているのかもしれないし……」
「お前たち、デートはしないのか?」
ふたりきりのデートは一度もしていない。
会話らしい会話をしたのは今日がはじめてだ。
「彼女の父上にふたりきりで会うのを禁じられているからな」
「ああ、まぁ確かにそうだ」
顎に指をかけ、悦巳はうんうんとうなずく。
華族の令嬢は婚約したからといって男とふたりきりでは会わないのが普通だ。
悦巳が自由恋愛をする相手は、華族の令嬢ではない。芸者や女優など恋に慣れた女たちである。
「お前〝ふり〟なんか、必要ないじゃないか」
「ん?」
「俺は麗華さんがどんなドレスを着ていたか覚えていない。だがお前は、麗華さんをちゃんと見てる」
今更なにをと思う。
婚約者というだけでなく、舞踏会ではダンスまで踊ったのだ。ドレスくらい覚えていて当然だろう。
「よーく胸に手をあてて考えてみろ。――お前は彼女が好きだ」
(えっ?)
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