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「意味はわからないけれど、お茶会は私も欠席するわ。だから小百合さんも念のため欠席してほしいの」
これみよがしに深刻な表情で、大袈裟に息を吐く。
「私、怖くて……」
「わかった。わかったわ麗華さん。あさっては一日中家にいるようにするわ」
「そう、よかった。橘侯爵家には私から事情を話しておくから心配しないで」
小百合は、知らせてくれたお礼にと、小百合が刺繍をしたハンカチをくれた。
「いいの?」
「もちろんです。むしろこんなものしかなくて……」
とても綺麗な赤い薔薇の刺繍だった。
「小百合さんって――」
思い切って、流星をどう思っているのかと思ったが。
「はい?」
小百合の優しい微笑みを見てやめた。
聞いてどうするのか。
未来は決まっているのに……。
「本当に器用なのね。とっても綺麗」
小百合は頬を染めて「ありがとう」と照れた。
あともう少し。
この事件さえ乗り越えれば、あとは婚約を破棄するだけ。
そうすれば、みんなが幸せになれる。
うまくいけば、小百合とも友達になれるかもしれない。
そう、きっと――。
そして次の日の午後。
用事を作って出かけ、休憩と称して、男たちが潜むに違いない公園に立ち寄る。
「公園でちょっと散歩をしましょう」
「はい」
昼の公園は花壇に様々な花が咲き、多くの人が散歩を楽しんでいた。
「ちょうどお花の季節だから綺麗ですね」
なにも知らない小桃は花壇や噴水に目を向けるが、麗華はさりげなさを装い、男たちが隠れそうな場所を確認した。
公園は柵に囲まれていて、柵の内側に桜の大木がポツポツと植えられている。
すでに葉桜となった枝は上の方しか伸びていないので通りから見通しもいいが、幹には大人が隠れるにも十分の太さがあった。
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