青の君

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 翌朝、私はあくびをしながら海に来ていた。  五時起きなんて普段しないようなことをしたのは、日の出を見たかったからだ。  コンクリートに腰を下ろし、まだ暗い海をじっと見る。左腕には、小学生のとき初めて行ったスパークルのライブで買ってもらった、リストバンドをつけていた。  タオルで作ったうさぎを渡したときの青くんの笑顔に、私はやられた。それも仕方ない。あのときのロケは私の地元で、うさぎをもらった女の子は私なのだ。あのうさぎはいまでも家に飾っている。  直接会って話すという少し反則にも思えるきっかけで、私はアイドル眞島青を好きになった。でもテレビの仕事中の時間だったから、プライベートではないだけギリギリセーフともいえる。  女性アイドルと違って、男性アイドルに寿命はないに等しい。だからこのままずっといてくれるんだと思ってた。いつまでも応援できるんだと思ってた。  あと数ヶ月で、青くんはあのキラキラした世界から完全に去ってしまう。私たちがこれからの青くんの姿を目にすることはもうないのだろう。  たくさんの幸せをくれた青くんが、どうか幸せな日々を送ってくれますように。  水平線が明るく縁取られ、太陽が顔を出す。その光景は鮮烈で、眩しくも目を離すのはもったいなかった。 〈終〉
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