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ななちゃん。
秋風に乗せて、何処からともなく金木犀の香りが届いた。
金木犀の香りを嗅ぐと、思い出す人がいる。
俺には10歳離れた、親戚のお姉ちゃんがいる。
俺が3歳の時、ななちゃんと出会った。
子供の頃、夏休みやお正月などで親戚が集まるとそのお姉ちゃんが居た。
俺は男3兄弟の末っ子で、その時お姉ちゃんという存在に初めて出会った。
今まで感じたことのない包容力と、言葉では言い表せない魅力に惹きつけられて、ななちゃんのことが大好きになった。
休みの間はずっとななちゃんにくっついて離れなかった。ななちゃんの膝に座ったり、膝枕してもらったり、歩くときは必ず手を繋いで、眠る時も一緒だった。
ななちゃんも俺のことを本当の弟みたいに可愛がってくれて、一緒に居られるのが嬉しくて幸せだった。
だけど、お別れの時間はやってきてしまう。「バイバイ」が悲しくて嫌で、ななちゃんが帰ってしまった後も、俺はその場を離れられずにしばらく泣いていた。
そして「どうして僕にはお姉ちゃんが居ないの?」「お姉ちゃんが欲しい」と泣きじゃくっていた。
これがななちゃんと会った時のルーティンだった。
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