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エピローグ
コウキは先程から、耐えていた。
何をかというと、カウンターに座ってにやにやと笑う、ゴウキにである。
「ゴウキ、うるさい」
「え〜?俺、何にも言ってないけど?」
「さっきから、顔がうるさいんだよ、顔が」
「気になるならさ、さっさと教えろよ。お前のそれ、どうしたのかをさ」
「それ」の部分でトントンと、胸元を指差す。
そう、今日のコウキの胸元にはいつもあるものが無い。
あれから数日経つが、待ち人はまだ来ていない。
正直、来るかどうかわからなかった。
「お前に教える義務はない」
付き合いが長いだけあって、話さずとも大体の事情を察しているであろうゴウキがこの状況を大いに楽しんでいるのが腹が立つ。
その時、コウキは待ち望んでいた気配が近づいてくるのを感じた。
やがて「黄昏」の扉が開く。
ループタイを握りしめて来た、その人物を見て、コウキは滲むように笑った。
「いらっしゃいませ、瑠璃子さん」
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