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日が沈んた薄暮れの中、土手の上の道に出たところで背中越しの突風にあおられた
振り向くと東の空は深い藍色
耳にまとわりついていた寒蝉の声は、いつの間にかヒグラシのそれに代わっていた
もうそこまで夜がやって来ているのだ
さっき風が強く吹いたとき、夏が行ったのを感じた
思えば今年はまだ花火を見ていない
ふと気が付いて、やがて紫に染まる西の空に、ゆく季節を見送る
ここに今あるのは名残惜しさだけ
きっと次に吹く風は、少し寂しさを運んでくるのだろう
夜の長い季節がやってくるのを待っている
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