4人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
私は、夜の散歩が好きだ。
とはいえ、夏の夜でも蒸し暑い。
汗をダラダラかきながらテクテクと2〜3時間、歩き続ける私。
夏は微かに蝉の鳴き声が私の耳を賑わってくれて寂しくなかった。
それでも9月に入ると、その蝉たちは死に絶え、私は悲しく思っていた。
するとだ。
リーンリーンと爽やかな音色が私の耳に届き出した。
私は何の音だろう?と、近くの公園のベンチに座り耳をすませた。
リーンリーン。
リーンリーン。
どうやら草むらから、その音色が聴こえてくる。
リーンリーン。
そうか。
これはきっと鈴虫が奏でる音色だ。
9月に入っても、まだまだ蒸し暑い夜。
それでも、
「秋になったんだよ?」
と、鈴虫たちが私に話しかける。
そっか、秋か。
夏の終わりを感じた、ある日の夜。
私は、鈴虫たちに秋の訪れを知らせてくれて、ありがとう……と、公園のベンチから立ち上がり、汗をかきながら再び夜の街中を闊歩しだした。
【了】
最初のコメントを投稿しよう!