【音色】

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私は、夜の散歩が好きだ。 とはいえ、夏の夜でも蒸し暑い。 汗をダラダラかきながらテクテクと2〜3時間、歩き続ける私。 夏は微かに蝉の鳴き声が私の耳を賑わってくれて寂しくなかった。 それでも9月に入ると、その蝉たちは死に絶え、私は悲しく思っていた。 するとだ。 リーンリーンと爽やかな音色が私の耳に届き出した。 私は何の音だろう?と、近くの公園のベンチに座り耳をすませた。 リーンリーン。 リーンリーン。 どうやら草むらから、その音色が聴こえてくる。 リーンリーン。 そうか。 これはきっと鈴虫が奏でる音色だ。 9月に入っても、まだまだ蒸し暑い夜。 それでも、 「秋になったんだよ?」 と、鈴虫たちが私に話しかける。 そっか、秋か。 夏の終わりを感じた、ある日の夜。 私は、鈴虫たちに秋の訪れを知らせてくれて、ありがとう……と、公園のベンチから立ち上がり、汗をかきながら再び夜の街中を闊歩しだした。 【了】
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