5章 ソウルセイヴァー集結

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 長い階段を登りながら、階段の先に見えた建物を見上げる。四日振りの帰還だ。 「もう会議始まってるんじゃない?」  隣を歩く長身の男、秋月 奏夜(あきづき そうや)は煙草をふかしながら言った。 「そうだね。ソウルセイヴァーが集結することなんかほとんど無いからすごくレアだって宇木條さん言ってた」  被ったままだった外套のフードをぱさりと脱ぐと、銀糸のような髪の毛が揺れる。 「強ェやついっぱいおるんかぁ、やり合ってみたいわ」  黄緑のポニーテールを名前の如く馬の尻尾のように揺らす藤堂 辰(とうどう とき)が肩越しに振り返り、興奮した様ににやりと笑う。 「返り討ちじゃない?」 「うっさいわ!」  にこ、と笑って言ったらぴしゃりと一蹴された。少女、天羽 白雪(あまは しらゆき)はくくっと笑いを噛み殺して肩をすくめてみせた。 「しっかし、増えたねS-i」  隣でコキコキと肩を鳴らした奏夜が薄紫のサングラスのレンズの奥の金の目を細めて、独り言ちるように呟いた。  そうなのだ。あのシヴァ一族の宣言の後日から、S-iの出現情報が増えたのだ。  と言ってもS-i自体はさほど強く無いのだが、まるで挑発する様にさまざまな町村に出没しては人間を襲っている。  噂半分、オカルト集団だなんてあまり信じられていなかったソウルセイヴァーもおかげで良くも悪くも人々の認知度が上がった。  しかし決してその視線は温かいものではなく、異能を使う人間達を異端なものを見る様な畏れた目つきで見る物が大半だった。  S-iは化け物。ソウルセイヴァーは、S-iという化け物を倒す力を持った、化け物といったところか。 「殺し方もえげつななってきてるしな」  そう、今までのS-iは人間の魂だけを喰うことがほとんどだった。魂だけを喰われた人間は外傷もなくただ死ぬ。その魂は転生出来ずにただただそのS-iの力となる。  ただ最近、異端種というものが増えた。  人間の魂を身体ごと喰うS-iだ。まるで遊ぶ様に四肢をもぎ取り喰らい嬲り殺すので、現場は大抵血の海。同じ死ではあるが、人々により恐怖をもたらしている。  死体の肉体がなければ火葬も出来ない。遺された遺族の悲痛な叫びにやるせ無くなる。 「……ふざけてやがるわ」  この場の誰よりも情に厚い辰が、怒気を孕んだ声で呟いた。  今回の任務でも何人かの死人を見た。その度辰は怒っていた。  勿論白雪とて何も感じないわけではない。だが、いちいち怒ったり泣いたりするにはあまりにも"慣れて"しまったのだ。それは隣にいる彼とて同じ事だろう。  だからこそこの真っ直ぐな彼女が羨ましくも思える。願わくば、そのままでいて欲しいとも。
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