5章 ソウルセイヴァー集結

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 食堂に入ると一斉に突き刺さる視線。居心地の悪さに白雪は溜息をつきそうになるが、辰の迫力のあるギロリとした目付きに皆視線を外す様子がなんだか可笑しくて、彼女の背中をぽんと叩いて注文口に向かう。  注文口の台に腕だけで飛び乗りにゅっと顔を出すと、ディンがにやりとした。 「よう白雪、任務お疲れさん」 「ありがと。今日のおすすめ三人前と、甘味十人前で」 「任せな!お前さんが来ると料理人の血が騒ぐぜ」  よく通る大きな声で厨房にオーダーを通すディンに、厨房からは大きな返事が返ってきた。  このスキンヘッドでムキムキの厳つい料理長は、最初から白雪に偏見など持たずにただ沢山食べる少女に腕が鳴ると気に入ってくれている。  白雪もこの気さくで、美味しい料理を作ってくれる彼は割と好きで、今ではオーダーもおまかせで頼んでいる。  次いで辰も奏夜も注文をして、料理が乗ったトレーを受け取った三人は空いている席に座った。  安定して山盛りに積み上げられたトレー三つの前で、白雪は手を合わせてから料理達を胃の中に吸い込んでいく。  まるで手品の様にその小さな体に消えていく料理に何度見ても不可解やと思いながらも辰もカツ丼を頬張る。  あっという間に最後のプリンを平らげた白雪は、満足気に手を合わせてごちそうさまでしたと呟いた。 「テメェはブラックホールかよ」  呆れた様な声が横からかけられ、ちらりと目線をやるとトレーを持った白木 陽(しらき よう)と宇木條 美桐(うきじょう みぎり)。 「それって褒め言葉?」  わざとらしくこてんと首を傾げて聞くと、違ェわ!!と返ってきた。 「能力使うには糖質取らなきゃ」  白雪が能力を使うと、それに比例してエネルギーが減っていく。つまり力を使えば使うほど腹も減ってくる。白雪にとって能力とは糖質、すなわち砂糖なのだ。  本音を言えば甘味ばかりを食べていたいが、幼少期からレイヴンや奏夜に砂糖ばかり食べるな肉や野菜を食えと口を酸っぱくして言われた為、普通の食事も摂る様にしている。   「宇木條さん達も任務帰り?」  隣の二人掛けテーブルに座った美桐と白木に聞くと、彼女は「昨日帰ってきたの」と言った。お疲れ様、というと「天羽さん達もお疲れ様」と言ってくれた。  どうやら彼女達の対峙したS-i達も変異種だったようで、二人ともどこか疲れたような顔色をしている。 「あの、奏夜さん。もし良ければ後で鍛錬つけてくれますか?」 「ん?ああ、勿論。美桐チャンと同じ時間を過ごせるなら願ったりだヨ」  あの日から空いた時間を奏夜に鍛えてもらうようになった美桐。任務帰りでも嫌な顔ひとつせず、にこりと笑って請け負う奏夜。 「なっ、テメェくそジジイ、美桐に変なコトすんじゃねェぞ!俺も行く!」 「ん〜少年、変なコトってどんなコト?」
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