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そのうちに季節はめぐった。万国博覧会も無事閉会し、水晶宮はその内にあった宝物を世界中へ吐き出し終えたあと、たった数日で解体された。
水晶宮があった場所は、今はだだっ広い広場となっている。あの輝きは、すっかり過去のものとなったのだ。
だけど僕は知っている。
エリカがどこへ行ったのかを。
だって見たからだ、この目で。
あの時、水晶宮にいた時、僕は見たんだ。鏡から突き出た手を、エリカを引っ張り込もうとした、なめらかな白い二つの腕を。
言ったって誰も信じてもらえないだろう、だから僕は誰にも言わない。この真実は、僕だけが信じるのだ。
いつか僕は、あの剣を手に入れようと思う。悪魔の呪いを解く、あの剣を。
そして僕は連れ戻すのだ。いつか、エリカを。
忘却を許さない悪魔のもとから。
おわり
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