水晶宮

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 新聞に書かれていた通り、世界中の財宝が飾られているようだった。世界最古の宝石。王の骸骨。金でできた糸でしか織られていないカーペット。  剣があった。  悪魔の呪いを解く、と書かれてある。  エリカはそこで立ち止まった。自然と、僕も立ち止まる。  エリカは剣をじっと見ている。そして、そのそばにある鏡も。 「……かっこいいね」  僕は、エリカに話しかけた。 「この剣、悪魔の呪いを解くことができるんだって。これがあったら、きっと誰よりも強くなれるね」  するとエリカは、ぼそぼそと 「でも死神からは逃れることはできない。悪魔でさえも」  と言ったのだった。 「え……」  そしてエリカは、すっと手をふりほどいた。  そして、その手を鏡にかざして、鏡にさわろうとした。 「母さん」  そうつぶやいて。  するとつぶやいたとたん、エリカの体がぐらりと揺れた。そして急に、バタバタとエリカが暴れ出した。 「いやっ、……だめっ」  そしてエリカはバン、と、後ろの壁に飛んだ。エリカの背中が、後ろの壁に強く当たった。 「いっ……」 「エリカっ」  エリカは床に倒れた。 「エリカ、大丈夫」 「うう……うん」
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