5/11
前へ
/102ページ
次へ
 焔と凱楽対斬火。  詩雲と雷煉対飛雷。  天雷対叢雲が戦っている最中に翠とララは闇神と戦を繰り広げていた。  地割れの間から作られた闇神の影の触手を青嵐と揚葉が翠とララの戦いを妨げないように応戦し、実験生物を全て解放した霖が戦いに傷がつく度に水の神力を使って瞬時に傷を癒していく。 「く···そが····」  呪毒の気体を喰らった悪神がうつ伏せに倒れたまま二人の相手をしている闇神を睨みつける。  身体から莫大な神力が抜けていくのが感じ取れる。  愛姫も見つからず、戦も呆気なくやられて打つ術が無い。  これを純度の高い酒に混ぜて飲まされた水神の苦しみがよく分かる。  それなのに生き延びて愛姫を囲い自分の懐の中に入れていたと言うのには本当に驚かされる。  どうせこの肉体が死ぬなら悪あがきくらいはさせてもらう。  悪神の身体から黒い靄が現れる。  肉体を捨てて魂だけになれば自然に帰る事が世の理だと言うのにこの悪神にはその概念がない。  黒い靄が魂を包み込み、せめて誰かの肉体に入って闇神を殺してやると、悪神はニタリと笑った。  同じ悪神で闇の神力持ちである闇神自身を乗っ取る事は出来ない。  その前に影によって暗黒空間に連れていかれるだろう。  勘が鋭い蕃神も乗っ取る前に先読みをして逃げられそうだ。 「······あの小娘はどうだ?」  聞けば水神の嫡女と言うではないか。  しかも、この娘の神力は澄んだ水の様に心地のいいものだ。  呪毒が効かないとなると己の喰らった呪毒すら消える可能性だってある。  そして何より水神の巫女を務めていてその身体はまだ男を知らない。  実に良質な魂だろう。  そうと決まれば悪神は翠の身体を乗っ取る為に向かって行った。
/102ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加