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タイムリープという現象は、時間軸を同じようになぞりたがるらしい。お葬式が終わって数日後、前回と同様に夏樹のお母さんが私を彼の部屋に上げてくれた。
中の花が枯れたストラップを、元あった位置に戻す。
「願いを叶えてくれてありがとう。何も変えられなかったけどね……」
足元がふらつく。私は机にぶつかり、盛大に転んだ。
何やってるんだろう、私……。
同時に、バサッと何かが落ちる音がした。ノートだった。落ちた衝動でページが開かれる。
ああ、例の……夏樹が自分を否定していた文章の……。
手を伸ばした直後、中身を見た私はハッとし、息を飲んだ。
自分には価値がない……そう書かれた文章の書かれた全ページに、大きくバツがふられていた。
そして、一番最後のページに、こう書かれていた。
『琴葉、ありがとう
僕も琴葉のことが大好きだよ
明日、返事するの少し恥ずかしいな』
紙に、丸い水滴の染みが次々とできる。
「夏樹……」
止まらない。心を優しく包み、とめどなく溢れ続けるこの想いを、どうにも言葉にすることができなかった。私はノートをぎゅっと胸に抱きしめた。
少し冷たい風が、半開きのドアの隙間から通り抜け、遠くから聞こえるヒグラシの声が、耳に溶ける。
苦くて切ない、夏の終わりだった。
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