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「お父さんとそんな約束してたんだ?」
「去年、どこも行けなかったから来年こそはハワイにでも行こうなって。多分それ三年ぐらい続いてる」
「それは不憫だな」
「俺のこのワクワクしていた気持ちはどうしたらいいんだよ! 今頃はマカダミアナッツ入りのチョコを藤川と沢田と佐藤さんに配りながら『えっ、椎名くんハワイ行ったの? 羨ましい!』って言われていたはずなのに!」
「俺には?」
近くで話を聞いていたのか、金髪ヤンキーの小野田くんが声をかけてきた。
小野田くんも友達の沢田くんや佐藤さんといつも一緒にいるんだけど、椎名くんの中ではまだその輪に入っていないらしい。
「真っ黒に日焼けした肌の皮がちょっと剥け始めて、うまく剥がれそうで気になりすぎて授業どころじゃない、みたいな感じを味わっていたはずなのに!」
「なあ、チョコ。俺には?」
小野田くんは不安顔だ。
「ハワイのカラッとした風と日本のジメッとした風の差を感じて『やっぱ日本って湿度高すぎじゃね?』って軽く日本をdisる発言してたはずなのに!」
「俺のチョコは?」
「うるせえなもう、土産物屋に行って自分で買えよ!」
とうとう椎名くんはキレた。なぜお前がキレる。
小野田くんは踏んだり蹴ったりでちょっと可哀想だな。
「何でだよ、俺にもチョコくれよ!」
いや、やっぱウザイか。
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