椎名くんは出かけない

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「何で泣いてたの?」 「お母さんが副機長と不倫してるってみんなが言うの」 「楽しい旅行前に家庭のドロドロ話するのやめて?」  こんな調子でハワイに行けるのかな。  心配したけど、私たちは何とか迷子問題も機長に預けることで解決し、飛行機に乗ることができた。  すると今度は椎名くんが別の人物で機内アナウンスを始めた。 「『ご搭乗の皆様、本日は○○エアラインへようこそ。副機長のフリンです』」 「名前だったんだね」  意外な伏線回収きた。 「『機長は本日諸事情により当機を降りましたので、代わりに私が機長を務めさせていただきます。初めての機長で若干緊張しています。それでは景気づけに一曲歌わせてください。マカダミアナッツ音頭』」 「誰の歌⁉︎」  やだなあ、ハワイ行く前に聴きたくない歌ナンバーワンかもしれない。  副機長の上手いのか下手なのか一生分からない歌を聴いている時だった。 「もう我慢できねえ!」  謎の人物が私たちの妄想飛行機に乱入してきた。 「この飛行機を今すぐ着陸させろ! さもないと操縦士を撃つぞ!」  ハイジャック犯、小野田くん現る。  すっかり存在を忘れていたけど、そういえば最初からいたんだよね、この人。 「何だお前は。何が目的だ? 要求を言ってみろ」  椎名くんは冷静に小野田くんを見る。 「マカデミアナッツチョコだ! お土産のマカデミアナッツチョコを俺にもくれ!」  そんなに欲しいか、マカデミアナッツ。
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