椎名くんは出かけない

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「どうする、椎名くん」 「あんなアホは放っておきたいが……このままでは操縦士がやられる」 「あっ。ノってあげるんだね」  私も緊迫感を出したほうがいいのかな。緊迫感ってどうしたら出るんだろう。 「落ち着け、小野田。ここで操縦士を撃ったら永遠にハワイに着けない。つまりお前に買ってくるマカダミアナッツも買えないんだぞ。それは困るだろ?」  説得しながら、席を立ち、銃を構える仕草の小野田くんに対峙する椎名くん。 「うるせえ! お前ら二人で楽しそうに旅行の話なんかしやがって! お前らの乗る飛行機なんて俺が墜落させてやるよ!」 「分かった。分かったから。お前の分も買ってくるよ。それでいいだろ?」 「……本当か? うおっと!」    小野田くんの体がフラついた。どうやらエアポケットに落ちたらしい。って、無駄に芸が細かいよ。 「隙あり!」  その隙を見逃さず、椎名くんが突進する。二人で銃の取り合いになる。 「ちょっと、危ないって! いろんな意味で!」 「こっちに来るな藤川! あぶな──」 『バキュン!』と小野田くんが私の方に銃口を向けて撃った。  えっ。私撃たれた? 「い、いったーい」 「大丈夫か、藤川!」  お前らが大丈夫か。  とりあえずお腹を押さえてみたけど、クラスメイトの目がかなり恥ずかしい。 「この中に、お医者様はいらっしゃいませんかーっ!」  人目を憚らず叫ぶ椎名くん。  もうやめて。恥ずかしくて死ぬよ。  こんなハワイ旅行、行くんじゃなかった。  私は周囲から顔面を隠したくて、机に突っ伏した。
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