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見晴らしのいい展望スペース、さえぎるものは何もない。つばさだったものは、ゆっくりとゆっくりと空にのぼって溶けてゆき、いつしか、見えなくなった。
僕は涙を拭かなければならなかったので、つばさだったものを最後まで見届けることができたか定かではない。
でもはっきりと、分かったんだ。
もうつばさの「一生のお願い」はないのだということが。
僕は空に向かって、つぶやいた。
「バイバイ。またね」
それからしばらくして、つばさが亡くなったことを知った。中学の時のクラスメイトが連絡を回してくれたのだ。それがきっかけで同窓会的な感じでみんなで集まって、つばさのこととか、自分たちの近況を話した。
「つばさ」は、こっちに戻ってきているのだそうだ。この町の先祖の墓に入れてもらったのだという。今度墓参りに行こう、とみんなで話した。でも具体的な日程決めまでには至らなかった。
もし墓参りに行くことが決まったとしても、僕は行かないだろう。僕は、空を仰ぎ見る。
「一生のお願い」、あれだけ聞いてあげたんだから、一つくらい見返りを求めてもよかったかな。
つばさ。
もう少し君のとなりにいたかった。
おわり
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