8人が本棚に入れています
本棚に追加
それだったら自分で来ればいいのに。何か事情でもあるんだろうか? そういえば今どこに住んでいるんだろう? 遠いところにいるのかな? この町に、簡単に戻ってこれないような場所に。
きっと、そうなのだろう。
僕は見上げた。
空が遠い。負けじと、山の木々も高く伸び、遠くで木のてっぺんがさわさわと揺れている。
僕はスマートフォンをかざして、シャッターを切った。
空は狭く、木々はぶれて、何を撮りたいんだったか分からない写真になってしまった。
しばらく登ると、だんだん丸太の階段がジグザグになってきて、最後に超絶長い一直線の階段が現れた。
踊り場がひとつもない。ラスボス感満載の階段である。
「くそぉ……」
でも今の僕は、登るしかないのだった。
なにしろ「一生のお願い」されてるので。
「あいつ、今ごろ何してんだろうな……」
疲れすぎて、ひとりごとが声に出てしまう。運動不足の身に急な山道は禁物なのだった。
――もうやめとけば?
――やめとけば?
――いたくない?
――いたそうだよ?
と、両足が森の精霊たちのように小さな声でささやいてくる。
「お……おかしい……」
最初のコメントを投稿しよう!