君の一生のお願い

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 それだったら自分で来ればいいのに。何か事情でもあるんだろうか? そういえば今どこに住んでいるんだろう? 遠いところにいるのかな? この町に、簡単に戻ってこれないような場所に。  きっと、そうなのだろう。  僕は見上げた。  空が遠い。負けじと、山の木々も高く伸び、遠くで木のてっぺんがさわさわと揺れている。  僕はスマートフォンをかざして、シャッターを切った。  空は狭く、木々はぶれて、何を撮りたいんだったか分からない写真になってしまった。  しばらく登ると、だんだん丸太の階段がジグザグになってきて、最後に超絶長い一直線の階段が現れた。  踊り場がひとつもない。ラスボス感満載の階段である。 「くそぉ……」  でも今の僕は、登るしかないのだった。  なにしろ「一生のお願い」されてるので。 「あいつ、今ごろ何してんだろうな……」  疲れすぎて、ひとりごとが声に出てしまう。運動不足の身に急な山道は禁物なのだった。  ――もうやめとけば?  ――やめとけば?  ――いたくない?  ――いたそうだよ?  と、両足が森の精霊たちのように小さな声でささやいてくる。 「お……おかしい……」
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