第6話 恋に臆病な僕らのリスタート(6)

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「ほー、そうか。そこまで決まってんなら何も言うことねェわな」 「そりゃあ、何もせずに恋人と同棲ってワケにもいかねーもん。どこかの誰かさんは、俺のことペット扱いしてたけどねーっ?」 「そいつぁ、誰のことなんだか」 「ふふん、俺がいないからって寂しがんないでよ?」 「むしろ世話のかかるヤツがいなくなって、清々したっつーの」  いつもの調子で軽口を叩き合う。  京極のことは父親のように思っていたし、これくらいの距離感が心地よかった。  荷物を確認したところでもう一度頭を下げると、京極の隣をすり抜けて玄関へと歩いていく。そしてスニーカーに足を突っ込み、別れの挨拶をしようと向き直ったのだが、 「夏樹」京極が先に口を開いた。「お前と働けて、一緒に過ごせて楽しかったぜ。元気でやれよ」  ぽん、と大きな手が頭に乗せられ、少し乱暴に撫でられる。夏樹は思いがけない言葉に驚きつつも、すぐにされるがままになった。 「たまに遊びに来てもいい?」 「ま、茶ァくらいは出してやるさ」  そう最後にやり取りを交わし、手を振って別れを告げる。夏樹がエレベーターに乗り込む瞬間まで、京極は玄関先で見送ってくれていた。
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