307人が本棚に入れています
本棚に追加
エピローグ 君へ誓う未来
季節はめぐり、また新しい年度が始まってしばらく。
仕事を終えた隆之が帰宅すると、夏樹が「おかえりなさい!」と玄関まで出迎えてくれた。
隆之は頬が緩むのを感じつつ、いつものように挨拶を交わしてリビングに入る。そして、襟元を緩めたところであるものが目に入った。
「それ、また見てたのか?」
ローテーブルに置かれた婚約指輪――夏樹に告白した際に渡したものだ。
「だって、俺の宝物なんだもん。初めて出会った日と、告白された日の思い出が詰まっててさ……指にはめられなくても、眺めてるだけで幸せな気分になるんだよね」
指輪が入っているケースを手に取り、夏樹が慈しむような眼差しを向ける。時折こうやって眺めていることは知っていたが、ここまではっきりと言葉にされるとなんだか面映い。
「……それもいいんだが」隆之は頭を掻きつつ切り出した。
「ん?」
「来週の土曜、よかったら予定あけておいてくれないか?」
「えっ、なになに? デートしてくれんの?」
「その……さっき自分でも言ってただろ? 夏樹と初めて出会った日、だからさ」
言うと、夏樹の顔がじわじわと赤く染まった。
最初のコメントを投稿しよう!