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◇
一方その頃。京極の住むマンションでは、夏樹が同じようにスマートフォンを持ちながら唸っていた。
「ねえ、オーナー。『今、何してる?』ってLINEすんのどう思う?」
甘ったるい声がリビングに響く。声をかけられた京極は、読んでいる新聞から顔を上げずに答えた。
「テメェが送りたいなら送りゃいいだろうが」
「だってさ、俺よか大人の人なんだよ? そーゆーの面倒くさがられたらどうしようって」
「……俺にとっちゃ、今の状況が実にめんどくせェんだが」
「うーん、『次のお休みいつ?』って訊くのは?」
こちらのことなどお構いなしといった夏樹の様子に、ため息もつきたくなる。
よくもまあ、メッセージひとつでそこまで悩めるものだ――京極が困惑しているうちにも、彼はああでもないこうでもないとブツブツ独り言を呟いていた。
かと思えばスマートフォンから通知音が鳴り、一瞬にしてその顔色が変わる。
「えっ、ウソ! 隆之さんからLINEきた!」
どうしよう、と夏樹は京極の方を見やった。
「『オナニーしてたよ♡』ってエッチな自撮り送ったら、喜んでもらえっかなあ?」
「お前さんな……店のブログじゃねェんだぞ」
「ああっ、でも既読つけちった! なんか返さなくっちゃ!」
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